脱法ハーブとは、乾燥させたハーブなどの植物片に幻覚や興奮作用のある薬物を染み込ませたもの。煙を吸引することで大麻と同じような幻覚作用を引き起こすといわれる。今年5月、脱法ハーブを吸引した男性が全裸で暴れ、その後死亡。10月10日には、愛知県で脱法ハーブを吸引し車を運転した男が女子高生を撥ね、死亡させる事件が起きたばかり。そんな危険な脱法ハーブだが、じつはその製造工程はけっして複雑ではない。今回、脱法ハーブの製造現場を特別に見せてくれた男性X氏は、次のように解説してくれた。


「薬物はバイヤーを通じてアジアの国からブロッグの塊が輸送されてくる。まずそれを崩してパウダーにし、それをアルコールで溶かす。それをハーブに混ぜるだけ。最も注意を払うのは薬物の調合。今は2~3種類の薬物を混ぜるのだけど、その割合が7対2対1とか、6対2対2とか、オリジナルの調合比率がある。たとえば女性の肌がものすごく敏感になる成分のものもある。脱法ハーブといってもいろんな種類ができる」


実際、たらいに粉状の薬物を入れてアルコールで溶かす。ツンとした強烈な臭いが部屋に広がった。防護マスクに防護メガネ、ゴム手袋をしたX氏は、さらにそこに乾燥したハーブ片を袋から両手で抱えて入れる。そして、薬物がまんべんなくハーブの葉に染みこむように丹念に揉み込む。じつはハーブ片は千葉などの国産。これを3~4日かけて天日干しにするのだという。乾燥したら3グラムずつ袋詰めにして完成だ。


「薬物の原材料は、アジア圏から入ってきている。なぜか現地の業者は、実に細かく日本の指定薬物や、規制強化についての情報を事前に把握している。だからバイヤーから『今度の規制に引っかからない薬物がある』といった情報がどんどん入ってくるんだ。どこかで情報が漏れている可能性があると思うね。自分たちが主に取り引きしている国には薬物を製造している業者が50社ぐらいあるんじゃないかな。それらが新しい成分の薬物を作り、こちらに情報とともに回ってくる」


X氏の”工場”ではオリジナルの脱法ハーブ7種類を製造し、1袋1千500~2千円で販売店に卸しているという。販売店はそれを、客に4千~5千円程度で販売している。「年間の儲け? 3千万~4千万円ぐらいかって? まあそんなところかな。具体的な数字は言えないよ」とX氏。そもそもX氏が脱法ハーブを製造しようと思ったきっかけは、昨年末にある中国人と出会い、薬物が手に入ると持ちかけられたのが最初だったという。


「もともと脱法ハーブは5~6年前に、最近暴れまくっている半グレグループが始めたもの。当時は億単位で金を儲けていたからね。俺もと思って、今年になって始めた。おいしい思いもさせてもらったけど、年内が潮時じゃないかな。じつは、11月と12月に新たに薬物を規制する大きな動きがあって、特に12月は脱法ハーブなどには、すべて規制がかかってくる恐れがあるんだよ。そうなれば、それ以降ハーブでは商売ができなくなるからね。だから、そうなる前に今ある在庫を売ってしまわないといけないから忙しいよ」


2012/10/17






「俺らは主成分を中国から輸入してきて、それをアルコールに溶かし込み、紅茶の葉っぱとかに付着させて商品を作っています。いわゆる“吹き付け”だけ。半年くらい前から『その程度なら自分で作っても儲かるんじゃないか』と考える愛好者が次々に新規参入してきて、今は競争が激化していますね」

 全盛期は年間約1億円を売り上げていたという、脱法ドラッグ製造業者のA氏(40代)はそう話す。

「そもそも、製造業者では化学式を勉強している専門家などいない。単純に言えば、日本の厚労省の規制に該当しないものを向こう(海外の業者)が調べて送ってきて、調合するだけ。で、自分でテイスティングしながら『コレはシャブっぽくキマるな』、『コレは大麻っぽいな』と思ったら、そういう謳い文句でパッケージして売り出す」



「ブーム後に脱法ハーブを使い始めた連中は『シャブや大麻なんてもってのほか』と思いながらも、『法律をクリアしているものならば大丈夫だろう』という甘い認識で、加減もわからず使っている。ぶっ倒れるのは当たり前ですよね。でも商売上、われわれも『このくらいが適量です』とは言えない。客を見ていると、毎日買いにくる人は、買いにくるたびに顔つきや目つきが変わってくるんですよ。瞳孔が開いているせいか、どこを見ているかもわからない。ウチの店員には、『脱法ドラッグは絶対にやるなよ』って言っています」